『サヨナラ、学校化社会』~学校化社会の「勝ち組」に明日はない!~

サヨナラ、学校化社会 (ちくま文庫)

 四流大学から一流大学まで、さまざまな教壇に立ってきた上野千鶴子が学校的生き方を斬る!『サヨナラ、学校化社会』 はそんな本だ。

教授が生計の場を斬っていいの? と思うかもしれないが、これが逆説的に、学校で何を学ぶべきかがわかる内容になっている。

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非婚ですが、それが何か?

非婚ですが、何か?

男20.1%、女10.6%――これは日本の生涯未婚率の割合。日本では、一生結婚しない人が増え続けている。その結果、出生率は低下し続けている。

50年前の1960年代は、ほぼ全員が結婚していた。日本はわずか一世代で晩婚・非婚社会に変わったのだ。出産適齢期の男女にいったい何が起きたのか? これに対する処方箋はあるのか?

今回のレポートは、フェミニズムの論客であり、社会科学者である上野千鶴子氏の講演です。

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誰に向かって、今なぜ、この記事を書くのか?

アフロヘアの記者

「大阪社会部記者はこうしてアフロになりそして次を目指す~次世代の報道実務と現場~」という講演タイトルを目にしたとき、その人の顔がすぐに頭に浮かんだ。

稲垣えみ子氏。「アフロヘアの朝日新聞編集委員」と言えばピンとくる人は多いだろう。

私は稲垣氏の言説にそれほど触れているわけではないのだけれど、「次世代の報道実務と現場」というサブタイトルに興味が湧き、早稲田大学ジャーナリズム大学院で開催された報道実務家フォーラムに行ってきた。

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いじめ問題を考える(後編)

いじめ防止の主体は子どもでなければ効果がない

辰沼(たつぬま)キッズレスキュー

日本で銃犯罪が少ないのは、銃が出回る環境にないからだ。いじめも同じように「いじめが起きにくい環境」をつくることができれば減らせるはず。

そう語るのは、足立区立辰沼小学校の仲野繁校長。実際、自校で「辰沼(たつぬま)キッズレスキュー」という子ども主体のいじめ防止活動を作り、いじめが起きにくい環境づくりに成功した人物だ。

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いじめ問題を考える(前編)~尾木ママ登場@法政大学~

いじめ問題を考える

尾木ママこと尾木直樹氏は、法政大学の教授で臨床教育学の専門家。その尾木ママがいじめについて語るというので、法政大学のシンポジウムに行ってきた。

シンポジウムのタイトルは「いじめ問題を考える2~予防のための教育のあり方~」。尾木ママほか2名の演者が繰り広げた熱いトークをレポートします。

いじめは事後対応より事前予防

学校は、教育の目的を達成できていない

いじめ問題の解決が難しいのは、加害者への指導が難しいからだと尾木ママは言う。加害者は「いじめ」ではなく「遊び」と思っているので、加害を認めない傾向にある。加害者には、人権感覚やモラルのズレがあるのだ。

こうした感覚のズレがあるのは、教育基本法の第一条に掲げられている「人格の完成」という教育の目的が達成できていない証拠。尾木ママは、生徒一人ひとりの「人格の完成」を目指し、いじめない人格・いじめない感性を形成する必要があると指摘した。

正しく質問すれば、アンケートでいじめを防止できる

「このクラスにいじめはありますか?」なんて学校で子どもに聞いても、子どもは正直には答えない。たとえ答えたとしても、単なる犯人捜しで終わってしまう。

いじめの未然防止教育の大切さを訴える尾木ママは、犯人捜しではなく、いじめの予防に役立つアンケートのひな形をネット調査会社と現在作成中だという。

アンケートは、いじめに対する子どもの感性をはかるものにするそうだ。いじめに対する感性が高ければ、いじめは起きにくく、逆に低ければ、いじめは起きやすい。だから子どもの感性をはかることで、未然防止につなげようというわけだ。

このアンケートは2015年4月下旬頃に公開予定で、教員が自由に使えるようにするというから要注目だ。

【追記】2015年4月23日に提供が開始されました。
『いじめの未然防止・早期発見を目的とするアンケートテンプレート』(株式会社マクロミル)

いじめ防止に役立つ心理学的アプローチ

ここで、質問です。

  1. 子どもがうしろめたい気持ちをもつのは何歳ぐらいからでしょう?
  2. うなずいて人の話を聞くのは何歳ぐらいからでしょう?
  3. 嬉しいけど怖いといった、入り交じった気持ちを認識するのは何歳ぐらいからでしょう?(たとえば「明日の運動会は楽しみだけど怖い」)

こんな質問で話はじめたのは、心理学が専門の渡辺弥生氏(法政大学文学部心理学科教授)。演題は「いじめ予防につながる子どもの理解と支援」。

ダメだとわかっているのに、なぜいじめてしまうのか?

3つの質問は、子どもの発達を理解しているかどうかを知るためのもの。こうしたことを知っていると、子どもの成長をみるのが楽しくなって、あたたかい眼差しを向けることができるようになるという。

ちなみに答えは次のとおり。

  1. うしろめたさ……4、5歳ぐらい
  2. うなずく……個人差が大きい(3歳でうなずく子もいれば、中学生になってもうなずかない子もいる)
  3. 入り交じった感情……10歳ぐらい

では、「いじめはダメ」ということは何歳ぐらいでわかるかというと、小学校低学年。ダメだとわかっているのにいじめてしまうのは、感情のコントロールができないからだそうだ。言い換えれば、平常心を保つことができれば、いじめないということになる。

やさしい子に育てる方法

平常心を保つといっても、たとえば父親は「うるさい」しか言わず、母親は「面倒くさい」しか言わず、息子や娘は「むかつく」しか言わない家庭では、「うるさい・面倒くさい・むかつく」の感情しか知りようがない。そんな3つのすさんだ感情で平常心を保っても、当たり前だが意味がない。

そんなときは、まずは子どもの世界を広げてあげることが大切だ。でも、子どもに「やさしくしなさい」なんて言ってもダメ。なぜなら、それが通じるのは「やさしさ」を既に知っている子だけだから。

子どもに「やさしさ」を教えるには、「やさしさ」とはどういうものかを具体的に示す必要がある。そのために、ある学校では、次のように紙に書いて貼っているそうだ。

「玄関でのやさしさは、靴をちゃんとそろえて下駄箱に入れること。脱ぎっぱなしの靴をみつけたら、下駄箱に入れてあげること」
「体育館でのやさしさは、ボールを順番に仲よくつかうこと」

いじめ予防にじわじわ効く「自尊心」

いじめの加害者も被害者も、自尊心が低いという特徴がある。これを逆手にとって、自尊心を高めることでいじめの予防につなげることができると渡辺氏は言う。即効性はないが、じわじわ効くそうだ。

では、どうすれば自尊心を高められるかというと、意外と簡単で、たとえば「朝、おはようの挨拶ができている」とか、「毎朝歯をみがけてる」とか、そういった日常の小さな行動からでいいので、できていることに注目して褒めることだそうだ。(次回に続きます

講演タイトル:いじめ問題を考える2~予防のための教育のあり方~
スピーカー :尾木直樹(法政大学教職課程センター長)、渡辺弥生(法政大学文学部心理学科教授)、仲野繁(足立区立辰沼小学校長)
開催日:2015年3月25日(水)
主催 :法政大学教職課程センター

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