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学問楽(ガクモンガク)

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賢い消費者or農家になりたい人にすすめたい本『有機野菜はウソをつく』

【どんな本?】
有機栽培は安全で安心というイメージがある。けれど実際には有機栽培であることと、安全・安心であることには関係がない。ではなぜそうしたイメージができたのか。本書は有機栽培の定義、歴史(始まり、広がり、変化)をひもとき、現在の有機栽培が抱えている問題点を明らかにする。

そのうえで、消費者と生産者が理想とする「安全で、安心で、おいしく、環境にやさしい食べ物」を消費・生産するためには有機栽培信仰をやめることだと説く。

著者の齋藤訓之(さいとう・さとし)は「月刊食堂」や「日経レストラン」などの編集記者を経て独立し、現在は、食品ビジネスに携わるプロ向け情報サイト 「Food Watch Japan」の編集長を務めている。亜細亜大学非常勤講師、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員でもある。

【どんな人向け?】
本当に安全・安心な食べ物を見分ける力をつけたい消費者と、環境はもちろん消費者と有機“的”ないい関係を築ける優れた農家を志す人。

有機野菜はウソをつく (SB新書)

【もくじ】

  1. 有機野菜だから安全・安心は大きな間違い
  2. 作物・土・成長のしくみを知った上で、有機栽培を考える
  3. 有機農業はどのような経緯で支持を得てきたか
  4. 必ずしも有機栽培である必要はない
  5. 健康な野菜を見分けることができる、それが賢い消費者

有機野菜のイメージと現実

有機栽培は「環境保全」を目的につくられたルールだ。出来上がった作物に農薬が付いていないことを保障するものではない。食の安全を担保しているのは食品衛生法である。このおかげで有機栽培であろうとなかろうと、基準値以下の残留農薬でないと出荷できないようになっている。つまり、有機栽培か否かによって、安全性に差がつくことはない。

有機栽培は健康にいい、というのも違う。栄養には差がないというデータがある。ではおいしさはどうかというと、作物が育つ仕組みから考えると、これも根拠がない。

ならば肝心の環境への影響はというと、これも残念な例がある。ブームで「高く売れるから」という理由で有機栽培を始めた生産者は、そもそもの目的である環境保全を理解せずに耕作しているので、環境にダメージを与えている場合があるのだ。

「おいしくて栄養のある」作物を有機栽培でつくれるか?

作物の三大栄養素は窒素、リン酸、カリウムだ。ほかにカルシウム、マグネシウム、イオウなども要る。おいしくて栄養のある作物をつくるには、これらの栄養素が欠かせない。しかし、単にあればいいというものではない。

必要な栄養素と量は作物の生長段階によって変化するので、それぞれの栄養素だけから成る肥料をタイミングよく与えないといけない。しかし有機栽培のルールに合う肥料は複合肥料が多いため、与えたくない栄養素まで与えてしまうことになる。

その結果、発育が悪くなったり、おいしくなくなったり、過剰になった栄養素が雨で河川に流れ出し、環境を汚染してしまうことがある。では、農薬を利用すればそうしたことは起こらないかといえば、そんなことはない。

おいしくて栄養のある作物ができるかどうかは、結局のところ、有機栽培かどうかではなく、農家の腕にかかっている。

賢い消費者・生産者になるポイントとは?

「無農薬だから、このキュウリは曲がっている」という売り文句でキュウリが販売されていることがある。しかし、農薬を使っても使わなくても健康に育ったキュウリは真っ直ぐで、太さも均一になる。もし曲がっていたとしたら、それは生長段階のどこかで水分や栄養素の過不足があったか、何かとぶつかったりしたか、それなりの理由がある。

おいしくて栄養のある野菜は、健康に育っている。だから見た目もいい。著者は消費者のために、健康な野菜を見抜くチェックポイントを詳しく解説している。一方、生産者のためには、優れた生産農家になるための4つのポイントを説明している。

少し専門的な話もあって、とっつきにくい箇所もあるが、正しく情報を伝えたいという著者の真摯さ・誠実さの表れと言える。もし賢い消費者・農家になりたいならば、ぜひ本書を手にとることをすすめたい。

有機野菜はウソをつく (SB新書)

有機野菜はウソをつく (SB新書)

  • 作者: 齋藤訓之
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2015/02/17
  • メディア: 新書
 

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