いじめ問題を考える(後編)

いじめ防止の主体は子どもでなければ効果がない

辰沼(たつぬま)キッズレスキュー

日本で銃犯罪が少ないのは、銃が出回る環境にないからだ。いじめも同じように「いじめが起きにくい環境」をつくることができれば減らせるはず。

そう語るのは、足立区立辰沼小学校の仲野繁校長。実際、自校で「辰沼(たつぬま)キッズレスキュー」という子ども主体のいじめ防止活動を作り、いじめが起きにくい環境づくりに成功した人物だ。

いじめは大人目線では防げない

いじめ防止活動は子どもが主体になってやらないと効果が薄いそうだ。なぜなら、いじめは子どもが主人公の出来事で、子どもの世界には、大人の目が届かない部分がどうしてもできてしまうから。

だから「辰沼キッズレスキュー」のメンバーは全員子ども。参加するかどうかは、子どもたちの自由意思。出入り自由にすることで、やる気のあるメンバーしか残らないという。

いじめの防止に役立つフラッシュモブ!?

「辰沼キッズレスキュー」の子どもたちは「いじめと反対の行動や気持ちが増えれば、いじめを防止できる」と考えたそうだ。その考えのもとに、実際にどんな活動をしているのかというと……

  • 校内パトロール(休み時間に20名ぐらいで「いじめはやめよう」と声をあげながら廊下を練り歩く。高学年の子は、トイレなど、目が届きにくい場所を見回りする)
  • 辰沼しぐざの実践(されてうれしいことや、言われてうれしい言葉など、思いやりのある行動を率先してやる)
  • 地域の清掃
  • けん玉選手権
  • 縄跳び王決定戦
  • フラッシュモブ などなど。

けん玉選手権あたりから、いじめとの関連がオトナには理解できないが、これはいじめ防止活動をカッコイイもの・楽しいのもにするための、子どもならではのアイディアだそうだ。

いじめの認知件数が増えることを恐れるな

「辰沼キッズレスキュー」は発足当初23名だったが、現在は常時200名ほど(全生徒数の約4割)が活動しているという。こうなると正義の味方があっちこっちにいることになる。

結果、どうなったかというと……いじめの認知件数が増えたそうだ。しかし、深刻なトラブルに発展するケースはゼロになったという。

これは子どものいじめに対する感度が高くなり、いじめの初期段階で「それはやりすぎだよ。それ以上はダメだよ」と、みんなで声をかけたり、先生に連絡がくるようになったから。子どもたちの活動のおかげで、いじめを小さな芽の段階で摘むことができるようになったのだ。

子どもの力をみせつけられる思いだが、仲野校長は「子どもを主体にすることと、子どもに任せっぱなしにすることとはちがう」と言う。大切なのは、子どもの気持ちを大人が受け止め、大人が本気になることだ、と強調して話を終えた。

いじめを予防できるかどうかは、大人の本気ぐあいにかかっているのだ。

講演タイトル:いじめ問題を考える2~予防のための教育のあり方~
スピーカー :尾木直樹(法政大学教職課程センター長)、渡辺弥生(法政大学文学部心理学科教授)、仲野繁(足立区立辰沼小学校長)
開催日:2015年3月25日(水)
主催 :法政大学教職課程センター

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