生きる力は学べるか?(後編)

教室

アカデミックより、実用のほうが好き

A:社会人になってから勉強にお金を使うと、その何倍にもなって返ってくる感じがする。

――社会人になってからのほうが勉強したくなるよね。なんでだろうね?

A:勉強したくなるのは、仕事に関連することだね。関連することじゃないと、私はおもしろくない。法学部のとき、法哲学なんて全然おもしろくなかったからね。自分に直結しないから。

私はアカデミックなことより、実利のほうが好きだな。今は読み聞かせの講座に通ってるけど、おもしろいよ。育児してるから。これも子どもを産む前だったらおもしろいって思わなかったと思う。

――実用派だね。学問楽は「学問はエンタメだ!」っていうキャッチで、大学ではおもしろいと思えるものを勉強したほうがいいよって言ってるんだけど、実用がおもしろいと思って、実用的なものを専攻するのはいいと思う。

自分がおもしろいと思えないのに、「これは役立ちそうだから、嫌いだけど専攻しとくか」みたいな感じだと、身につかなくて結局損することになると思うんだよね。

社会で必要な力って、課題を見つけて、調べて、解決策を考え出す力じゃない? そういう力って、何か好きなことをとことん突き詰めてやる中で身につくものだと思う。

A:それ、今はインターネットでできるよ。昔は調べることができなかったけど。

――ネットで調べるってことについては、ちょっと心配してる。卒論のコピペ問題がよくニュースになってるけど、それって調べてるんじゃなくて、答えを見つけようとしてるんだよ。どこかに答えがあると思って探してるだけ。自分の頭で考えてない。それが怖い。社会に出たら、答えがあることなんて、ほとんどないんだから。

事務職は全部エントリーシートではねられた

――仕事の見つけ方というか、働き始めるきっかけがいつも変わってるよね? 仕事はどうやって見つけてきてるの?

A:普通に求人だよ。ただ、1つ前の仕事は、おもしろいサービスの会社があるなと思って、お客さんとして利用できるか確かめるために説明会に行ったら、社長さんと話が盛り上がって、「じゃあ、働きますか」って言われたから「はい」って。

その前の不動産会社は、一軒家を買おうと思って、物件のことを聞きに行ったら、なぜかそこで働くことに(笑)。

――すごいよね。

A:その2つ以外は求人だよ。大学(の就活)のときは、100社以上説明会に行ったよ。会社について資料をもらって聞ける機会って貴重だから。1日に何件もアポ入れてた。

でもね、私、事務職は1つも受からなかった。総合職より事務職のほうが先に採用活動が始まってたから受けたんだけど、全部エントリーシートではねられた。総合職は内定を3社からもらったし、サークルの同期の中でも一番早い段階に決まったんだけど。たぶん事務職は適性がなかったんだろうね。

でもね、事務職が1つも受からないって、焦るよ。事務職のほうが、試験が簡単で受かりやすそうな気がするじゃない? だから落ちると、ガーンって(笑)。

――でも、生きてく力はあるよね。

A:わかんないんだよね、そう言われても。結局、仕事がなんでできるかっていうのも、わからなかったね(笑)。

【インタビューを終えて】
生きる力がある――そんな自覚はAさんにはまったくないらしい。自覚がないのに「その力はどこから来るのか?」なんて聞かれても、答えられないのが当然。でもだからといって、最後までその力の源泉は謎のままだったかというと、そうでもないんじゃないかと思う。

仕事であれ子育てであれ、彼女は楽しんでいる。楽しんでいるうちに、勝手に生きる力が身についていった感じがする。まぁ、これは学問楽の考え方なので我田引水かもしれないけれど。

※掲載内容は取材時(インタビュー時)のものです。
※この記事は旧サイトのコンテンツを一部改変し、移植したものです。

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