答えではなく自分なりの問いを探すために~『これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講』レビュー~

この本を読んで、どうして自分が文学にひかれるのか、どうして統計的思考が嫌いなのかがわかった気がする。

私が嫌いな思考とは――統計的にみれば、あなた1人の命を救うよりも、ほかの5人の命を救うほうが意味がある。社会的資源は限られているのであなたの命は見放します、という思考。

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たとえどんなに統計的に意味があっても、どんなに効率的に正しくても、こうした考え方に素直には頷けず、嫌な感じを抱いてしまうのが人間というものだ。

なんて、こうして人間というものを断定的に語ると、「いや、おれはそうじゃない」という人が必ず現れるものなんだけれど、またそれは必ずいるものだし、いていいのだけれど、私はそういうデータ原理主義的な思考を必要としないし、そういう人もまた私のような文学的思考を必要としないだろう。

お互いに必要としないのだから、あまり問題にならない気がするが、果たしてどうだろう。

『これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講』は代官山蔦屋書店で行われた連続対談を書籍化したもの。哲学や経済、文学、健康など11のテーマについて、11人の専門家が自分の専門テーマの本質を語っている。

実用書でもビジネス書でもないので、「あなたの悩みはこれで解決!」みたいな答えがある本ではない。自分がどう世界を捉え、どんな世界を理想とするのか、考えさせられる本である。